「朝から胃もたれでさ〜。お母さんおにぎり作ってくれるのはいいんだけど、塩と砂糖まちがえてるし」と言いながら、我がおっぱいに未練なしの著者である川崎貴子(以下たかちゃん)は生ビールを勢いよく飲んだ。

 

 

たかちゃん家族と同居して孫の子育てを積極的に手伝っているたかちゃんのお母様であるが、どちらかというと不器用なタイプらしい。学生時代のお弁当もだいぶエキセントリックだったようで、お弁当箱いっぱいの白米の真ん中にゆで卵がねじ込んであるのと、まるで武勇伝のように語る。当時、お弁当の時間になると、「今日の作品!」と言って、教室のみんなに披露していたそうだ。

 

 

同じ状況で、私にも同じことができるかと問われたら無理だと即答するだろう。きっとお弁当を見られたくなくて隠れて食べるか、そんなお弁当をつくる母親を責めるかしていたに違いない。たかちゃんは「料理上手になったのは母親のおかげ」と言うと、またビールを一口飲んだ。

 

 

 

「実はガンになったことも、これから手術することも、全部嫌なことって言えば嫌なことで、98%は本当に嫌。でも、残りの2%だけ実はワクワクしている自分がいるの」(本書より)

 

 

 

それが川崎貴子という人なのだ。でも、前向き…というのとは少し違う。

 

 

たかちゃんのi-colorはターコイズで、i-colorターコイズという素質の最大の強みは“鋭い直感”と“閃き”だ。本書でも

 

「私は元来、頑固で傲慢で面倒くさがりで更には素直さが欠けているために、成長や変化が乏しい。ところが、シャレにならない局面を迎えたときだけ、もがいて苦しんだときだけ、後日大きな変化を実感することがあった」

 

と明かしている。たかちゃんにとって、自分の人生に無理難題が降りかかったときが自分の能力を最高に開花できる瞬間なのかもしれない。

 

 

実際、20年来の飲み友だったたかちゃんと一緒に仕事をするようになって3年ほどになるが、仕事上のトラブルが起こったときの対応の鮮やかさに私はいつも舌を巻く。時代劇ばりの勧善懲悪でなく、誰も責めることなく手打ちできるのが貴子流だ。

 

 

自他共に認める「瞬間湯沸かし器」で、感情的な対応で数々の人間関係をこじらせてきた私は、そんなミラクルな解決法があることを知って腰を抜かしたものだ。影響力があるのもi-colorターコイズの特徴だが、たかちゃんとの出会いによって、間違いなく私の人生は大きく変化した。そういえば結婚も出産も。しみじみと思い返しながら、私もビールをすする。

 

 

たかちゃんは「私は冷たい人間なのよ」と言うが、それは違う。たかちゃんは知っているのだ。「完璧な人間などいない」ということを。そして、誰もがただ幸せになりたくてもがいている、愛すべき人々なのだということを。だからどこまでもどこまでも彼女はやさしいのである。

 

 

幸せになりたい女性の皆さん、年末年始のお供にこの本を強くお薦めしたい。ひふみんアイならぬ、たかちゃんアイで世の中を見てみると、あなたの人生もきっと、もっとワクワクするものになるはずだから。