はぴきゃりアカデミー・ヨーロッパ校主宰、ドイツ在住キャリアカウンセラーの柏葉綾子です。

 

私のクライアントさんは、基本とても真面目で、頑張り屋さんの方が多いです。たぶん、私自身がもともと真面目で頑張り屋だったからではないか…と思います。

 

努力は人生に必要なものです。

ところが真面目がゆえに悩み、頑張り性がゆえに泥沼にはまってしまう、そんなケースがあるのも事実。もしも心当たりがあったら、一度立ち止まって自分の足元を見つめてみませんか?

 

< 頑張っていたはずなのに空回り >

 

Aさん@i-colorグリーンはとても仕事のできる方でした。海外現地採用でありながら物流現場を取り仕切り、英語も堪能、外国人スタッフとの連携も抜群。

 

ところが本社から派遣されてきた駐在員は、Aさんの倍近いお給料をもらっているにも関わらず、現地の事情がわからず(Aさんから見ると)全く仕事ができない…。仕方なく彼女が現地スタッフとの仲介役を担うことで、Aさんの仕事は一時的に倍増、毎日のように残業が続くようになってしまいます。今度は忙しすぎて上司に仕事を引き継ぐ余裕がなくなってしまい、一時的な仲介役のはずが、いつまでたっても仕事は減りません。

 

真面目で頑張り屋のAさん。時間内に仕事を回したいと思うあまり、本社から派遣された研修生に対しても「この子に任せるより、私がやってしまった方が早い」と感じるようになってしまいました。

 

そんな彼女の転機は、良かれと思って取引先に流した情報について、先方から「現場が混乱するから、余計なことをするな!」とクレームを受けてしまったこと。思いもかけない言葉に深く傷ついたAさんは、我に返って仕事への取り組み方を改め、以来会社で必要以上に仕事を抱え込まないようになりました。

 

その結果…

 

回りきらなくなった仕事は、駐在員の上司がきちんと本社に報告してくれるようになり、頼んだ仕事しかやってくれなかった研修生は、Aさんの仕事のやり方を勝手に真似て1人で仕事を回すようになっていきました。

 

つまり、本当はAさんが頑張らなくても仕事は回り、Aさん自身はこれまで通り仕事をしていれば、それだけで十分周りに貢献していたことになります。

 

「自分がやらないと!」とはりきるあまり、自ら周囲の人が成長する機会を奪っていたことに気が付いたAさん。今は「残業しない」という新しい試みに挑戦中です。

 

 

< わかっているけどやめられない>

 

この件で興味深かったのは、Aさんは常々

 

「私がやらなくても、会社は回るんですけどね…」

 

と話していたことでした。
頭では分かっているのに、いつも必要以上に仕事を抱え込んでしてしまう….そんな負のループが、ここ何年かずっと彼女を苦しめていたようなのです。

 

クライアントさんの話を聞いていると、他にも似たようなケースが多いことに気がつきます。そして皆さんに共通していること、それは「毎日が忙しすぎる」という奇妙な実情でした。

 

知人のDさん@オリーブは接客業の傍ら、毎晩誰かと会食に行くのが通例でした。とても社交的で交友関係が広く「さすがDさんだな〜」と感心する傍ら、病的なまでに忙しく、むしろ疲弊すらして見える彼女の横顔を見てよぎった思い…

 

それは毎日のように誰かと会うことで、自分の抱えている虚無感や孤独感を紛らわしているのでは…?という疑問でした。

 

本来の自分と向き合いたくない時、人は予定を入れすぎます。忙しくしていることで気が紛れるし、先のことばかり考えることで今自分の置かれている状況を振り返らずにすむからです。

 

それが仕事に現れると、頑張ってがんばって、馬車馬のように走り続けることで徐々に自分を追い詰めてしまいます。なぜそこまで頑張ることをやめられないのか、というと、どうやら私たちの根底には

 

「もともとの自分には価値がない」

「がんばって人の期待に応える何者かにならないと…」

 

という、 無価値感が根付いているからのようです。

 

 

< 誰もが抱える心の影 >

 

先に挙げた2つの例でいれば、Aさんの場合は抱えている仕事の数、Dさんの場合はアポイントメントの数で、自分の価値を図ってしまう傾向がありました。

 

それはAさんが仕事で結果を残したいi-color表現グループ、Dさんは沢山の人とつながりたい発案グループだったこともありますが、それ以上に「それらを持てない自分には価値がない」という心の影が影響していたように思います。

 

「もともとの自分に価値がない」という前提で生きていると、人は結果や人脈を失うことを極端に恐れ、社会的な存在価値を求めて、限界まで頑張ってしまうことがあるようです。

 

もちろん私も例外ではなく、ほんの数ヶ月前までお客さんの数=自分の価値としっかり捉えている自営業でした。目を覚ましたのは「人の人生は数字じゃない」という厳しい指摘を頂いたことがきっかけです。

 

現実に目に見える保証がないと、自分の価値を実感できない。「無価値感」とは、そんな私たちに根付いている心の影かもしれません。

 

誰かに感謝されたり(i-color発案グループ)、仕事で結果を残せたり(表現グループ)、人から一目置かれる存在になれたら嬉しい(展開グループ)と感じる気持ちは、とても素直なものです。

 

しかし、たとえそれらが今手元になかったとしても、あなたの価値は変わりません。自分の存在価値を証明するために頑張るのではなく、やりたいと思うことを純粋な情熱で表現できたら、人生はもっと楽しく、身軽になるかもしれませんね。