皆さん、こんにちは。組織・人事コンサルタント i-colorカウンセラーの乾 千恵(i-colorイエロー/ピンク)です。

 

 

前回は組織のトップが「Why」を伝える大事さをお伝えしました。今回は特に親しい仲ほど、「Why」を語り続ける大事さをお伝えしたいと思います。

 

 

親しい仲ほど「あうんの呼吸」とか「俺とアイツには多くの言葉は要らない」と言って、「暗黙知」が存在すると思っています。1つのゴール目指して登っているときは多少の齟齬は気にならないものの、ゴールに到達したときや思い通りに進まなくなってきたときに「多少の齟齬」が大きな壁として立ちはだかることがあります。しかも、それは組織のトップ層の間で起こりがち。これが親子や兄弟なら、血みどろの熾烈な争いに発展してしまいます。

 

今回は、兄弟喧嘩と言えば、この二人「源兄弟」を取り上げたいと思います。

 

・・・源兄弟???

 

そう、鎌倉幕府の初代将軍 源 頼朝と義経兄弟のお話。

 

 

源頼朝、義経の兄弟は、源義朝を父にもつ兄弟ですが、母が異なります。頼朝の母は義朝の正室、義経の母は側室になります。当時、母が違えば他人と同然で、子供のころはお互いの顔どころか存在すら知らないことも多く、大人になって「はじめまして、兄です。」「弟です」となるケースが多かったようです。
しかも、頼朝、義経の兄弟は子供のころに父 義朝が「平治の乱」を起こして負けてしまい、平清盛によって処罰されてしまいます。この「平治の乱」は頼朝にとって初陣だったのですが、あいにくの敗戦で平家側に捕まってしまいます。平家の恩情により、命だけは救われて伊豆に流刑となりました。まだ乳飲み子だった義経は母とともに平清盛に引き取られます。のちに義経は鞍馬寺に預けられ、弁慶と出会い、紆余曲折あって、奥州藤原氏の平泉(現:岩手県)に引き取られていきます。

 

 

年月が流れ、源頼朝は関東の武士たちと共に「平家打倒」の兵を挙げます。その知らせは義経の耳にも入り、兄 頼朝のもとに馳せ参じました。

 

この兄弟に共通していたのは、「平家打倒」のみ

 

兄 頼朝は伊豆で流刑人生活をする中で、歴代の源氏が受けた扱いや武士たちが受けている理不尽な扱いをじっくりと見つめ、武士たちが何を望んでいるのかをずっと耳を傾けていました。そして、彼らの総意である「武士が統治する世」を実現させるために、現政権である平家を打倒する兵を挙げたのでした。
一方の義経は、「父の敵討ち」「平家を倒せば、源氏の世になる」という想定でした。つまり、既存のシステムの中で平家から源氏に政権トップが入れ替わるというイメージです。

 

優れた軍人であった弟 義経は壇ノ浦の戦いで平家を滅ぼしてしまいます。8歳の安徳天皇と、正当な天皇の証である三種の神器のうち草薙剣は平家と共に海に沈んでしまいます。義経は、鎌倉にいた兄 頼朝に報告する前に京都にいた後白河法皇に事の次第を報告します。後白河法皇は、義経に冠位を授け、褒美を与えます。それを家臣から聞いた鎌倉の頼朝は激怒したのです。

 

義経には、兄が激怒する理由が全く理解できません。そして、とうとう兄 頼朝と対立する道を選び、莫大な財力をもつ奥州藤原氏のもとに帰り、頼朝と対峙する準備を始めたのです。
「平家を打倒して、源氏が政権トップに立つという共有する悲願の目標を実現できたはずで、兄に褒められることはあっても、叱られる理由なんてこれっぽっちもないはずなのに。兄は、自分の悪口を言う家臣たちの言うことを信じてしまっている。自分に弁解する機会もくれないのか」と。
頼朝は義経を捕まえるための兵を奥州に送り込みます。最後は、頼朝の圧力に屈した奥州藤原氏が義経を裏切り、義経を自害に追い込みました。
ちなみに、京都から平泉への逃避行のエピソードが歌舞伎の演目として「勧進帳」「義経千本桜」に現代にも残り、「判官(=義経)びいき」という言葉も残っています。

武士たちの中で育った頼朝と、京都や平泉で育った義経では、「平家打倒」は同じ目標だったのかもしれませんが、その先に描いていたVISIONは全く別のものでした。頼朝はそれを義経に語っていたかもしれませんが、義経が納得し、理解し、思考を変えるまでには到りませんでした。
現代でも、経営陣で目標は共有できていても、「目的=Why」の共有ができておらず、目標が達成された瞬間に、お互いが目指している世界が異なっていることに気が付き、組織が空中分解を起こすことがあります。

一緒に起業した仲間だからこそ、一緒に事業を立ちあげた仲間だからこそ、「目的=Why」の共有はとても大切なのです。
頼朝は「弟だから分かるはず」「武士の家に生まれたんだから分かるはず」と義経に「平家を倒した後の世界」を伝えていませんでした。あとになって「そんなつもりじゃない」とか「あいつは分かってない」じゃなくて、最初から共有されていなかっただけなのです。

 

この場合の「共有」とは、単に双方が知っているレベルではなくて、ともに理解し、納得し、それを目指すことに合意していることを指します。

 

 

あなたのビジネスパートナーは、あなたと同じVISIONを見ていますか?「Why」を理解していますか?