世の中には
「短所は克服すべき」という価値観と
「短所は長所、だから許せるようになろう」という価値観
一見、正反対の2つの考え方があるように感じたことはありませんか?
このコラムをお読みの皆さんは、どちら派ですか?
日本の義務教育を修了したわたしは、もともと「短所は克服すべき」という考え方の持ち主であり、その後「短所を許せるようになろう」という考え方を経て、今に至ります。
「短所は克服すべき」は昔からなじみ深い考え方で、とても向上心あふれる価値観です。一方で、最近よく聞くようになった「短所を許す」という価値観には、一体どんなメリットがあるのでしょうか?
自分の短所を許せるようになると、人は一体どうなるのか?
わたし自身の過去も振り返りながら、自分の短所を許せない人と、許せるようになった人の価値観や行動の違いをまとめてみました。
>> 短所を許せない人と、許している人の違い
① 自分の短所を許せない人
✔️ まず自分に厳しい
✔️ 他人の短所を厳しく注意する
✔️ 短所を隠さず生きている人を見て「ありえない!」と怒りを感じる
✔️ 短所を補おうと頑張っているので、割と無難に仕事ができる
✔️ しかし無難がゆえに持ち味がないことが本人の悩み
✔️ 物わかりは良いが、自分への負荷には鈍感
✔️ 結果、不満を溜め込んでしまうことがある(時に倒れる)
✔️ 短所のカバーにパワーを使っているため、長所がなかなか突き抜けない
✔️ 特別な存在に憧れ、いわゆる「専門性」がないことが悩み
✔️ 短所を隠している自覚がある場合、あまり他人に心を開けない(バレたら困る)
✔️ 自覚がない場合、沢山の人と無難に付き合っているが、表面的な関係性が多い
短所を許せない人、というのは、以前の私のように仕事や人間関係のストレスが人並み以上に大きいと感じます。これは、自分に厳しいという行動特性の影響が大きいでしょう。
高い目標を持つことは本当に素晴らしいことです。そしてあなたはおそらく、それを成し遂げるだけのパワーを持った人です。でも、人生は永遠に走り続けるラットレースではないんですね。
上記の項目を読んで「なんだか当てはまるなぁ~」と感じたあなたは、時に自分に優しく接する時間を持って見るのはいかがでしょうか?
何事もバランスです。あなたはもっと、自分のために生きてみてもいいのです。
では逆に、自分の短所を真に許せるようになると、人はどんな風に変わっていくのでしょうか?
② 自分の短所を許している人
✔️ まず自分に優しい
✔️ 他人の短所を特徴と捉え、適性のないことは任せない
✔️ 短所を隠さず生きている人を見て「ありえない!」と爆笑する
✔️ 短所を補おうと頑張っていないので、仕事の適性がはっきりしている
✔️ ゆえに不向きな仕事を任されにくい
✔️ 基本的に自分に合わないことをしない(できないと知っている)
✔️ 結果、ストレスが少ない
✔️ 短所のカバーにパワーを使っていないため、特徴がはっきりしている
✔️ 無難な存在をすごいと思うが、自分以外の何者かになろうとはしない
✔️ 短所を隠してない自覚があると、他人に対してとても謙虚になる
✔️ 自覚がない場合、他人からの好き嫌いがはっきりとわかれる
短所を許せるようになった時の一番の恩恵は、何といっても「他人に優しくなれる」ことでしょう。
短所も含めてありのままの自分を知る=自分のポンコツぶりを理解することなので、他人のポンコツぶりを責める資格は、もとよりなかったことに気づかされます。
また、自分を大きく見せるためのプライドが必要なくなることも大きいかもしれません。
ありのままの自分を受けとめられるようになると、心の鎧をまとわなくても、素の自分のままで出歩けるようになるんですね。
>> 許しは他人に求めるものではない
ただ、ここで1つ誤解されやすいと感じる点があります。
「短所を許す」というと、いわゆる「これがわたしなんだもん!」と子供のように開き直ってしまうことを想像される方がいらっしゃいます。
この「開き直り」というのは、他人に認めてもらおう、他人に対して自分を押し通そう、という「力み」のはいった行動であることにはお気付きですか?
本来「許し」というものは、自分から他人に差し出し、自分から自分自身に対して行うものであり、他人に自分を許してもらおうとするのは、どちらかというと「甘え」なのかな…?と、わたしは感じています。
もちろん「甘え」が悪いということではなく、それも人間らしさの1つです。ただ「許し」と「甘え」を混用すると、とても誤解が生じやすいということです。
自分に対して行う「許し」は人の心を謙虚にしてくれます。もし「これでいいんだもん!」的な心のつっぱりがどこかに生じている時は、あなたはまだ、本当の意味で自分を許しきれていないのかもしれません。
そして最後に大切なことを。
心につっぱりがなくただ謙虚であれる時、わたしたちは自然と己の短所を「乗り越えたい」と感じる生き物です。
つまり「短所を許す」ことで、人は自然と「未熟な己を超越したい」「短所を克服したい」と感じるようになっていくんですね。
世の中には、2つの正反対の価値観があるわけではなく、人の進化の度合いに合わせて必要なことを伝えていただけなんだな、と感じるこの頃です。
ドイツ在住のキャリアカウンセラー。
はぴきゃりアカデミー第5期修了/i-colorオリーブ。ドイツ人材会社での勤務を経て、2015年9月よりキャリア講座を主宰。
>>ブログ『本当の自分を知る、自分と向き合う』
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